死んだらいかん!

“死んだらいかん!”
電通の新入社員が昨年のクリスマスに自死し、それが今月「過労死・労災」として認定されました。
亡くなったのが、東大文学部の女子新入社員ということで、ネットでも大きな話題となっています。さらに、部署がデジタルビジネス局であり、つい一か月ほど前に、“不適切な取引”が報じられた部門でもありました。さらに、自死にいたる前に、友人や同僚、さらに母親にも“悲痛な叫び、苦しさ、死にたい”などのメッセージがデジタルメディアを通じて、送られていたことで、驚きまたなぜ防げなかったのかと、誰もが思っただろう、悲痛な出来事でした。
もう一つ、忘れてはならないことがあります。電通には“長時間残業による労災認定の前科”があります。1991年入社2年目のOさんが自死し、それが最高裁で“労災”として認定されたのです。それを受け電通では“再発防止”に全社で取り組んでいました。私が働いていた営業部門でも、まず部署毎に月別の残業上限時間を設け、毎月個人の残業時間を日別に記載し提出していました。さらに、汐留の新社屋ではフラッパーゲートが設けてあり、全社員の入館・退館時間が記録されるようになっています。長時間残業、もしくは異常な入退館については、3か月続くと自動的に保険医の面接、さらには人事、担当部署、組合の労使での緊急会議を行い時間外残業の削減に努めていました。場合によっては、即刻の人事異動、又は人員増の処置など、できることは最前線の部単位、局単位、本部単位で実行してきていました。
今回の事件の詳細を知るにつけ、私には「本当にこれって、電通なの?」と思うくらい、別会社のような“カルチャー”とうか“風土”というか“職場環境の変化”を間接的に感じていました。

そして、10月16日(日)の朝日新聞の天声人語を読んで、大きな触発を受け、ブログで感じたことを、残しておこうと思ったのです。
今週は新聞週間で、各紙で様々な企画が掲載されています。時代の変化は、マスメディアにも大きな影響を与え、新聞の役割も大きく変わってきています。
昨年の国会の安保法制で一躍社会的に注目されたSEALDsの中心メンバー、奥田愛基さんは中学時代に“いじめ”にあっていたそうです。中学2年生の秋に、朝日新聞の朝刊で、劇作家鴻上尚史氏の「いじめられている君へ」を読み、
転校を決意した。コラムの中の一文「死なないで逃げて、逃げて」に心を動かされ、当時北九州に住んでいた奥田さんは、鴻上さんが訪れた沖縄・鳩間島を探し当て、そこに転校して立ち直るきっかけをつかんだ。
そして、天声人語氏は、この鴻上さんにコラム執筆を依頼した鴻上さんの高校の同級生だった朝日新聞記者山上浩二郎さんのことにも触れています。すでに53歳で病死されたそうですが、この山上記者の依頼があって、鴻上さんがコラムを書き、それを読んだ当時中学生だった奥田さんが、大きな、しかも、かけがえのない影響を受けて、新しい人生を歩むことができたわけです。

この天声人語を読み、改めて昨年4月に東京大学を卒業し、電通に入社し、配属されて約半年後クリスマスに、自らの人生を閉じてしまった「高橋まつり」さんを思うのです。
マスコミ、もしくはSNSからの限られた情報の中から、自死にいたった要因が大きくは長時間残業による精神的なものと、もう一つ上司によるパワハラがあるように思えます。どちらにしても高橋さんは自死という決断を実行してしまった。自死という選択肢は、最後の最後の最後の決断だと思いたいのですが、その前に、それ以外の選択肢を考えられなかったのでしょうか。どうしても私には理解できません。会社を休んでもいいじゃないか、会社を辞めてもいいじゃないか、なぜ友達、同期、同僚に泣きつかなかったのでしょうか。
一つ思うことは、東大文学部の秀才という、ある種の“選ばれた人、エリート意識”が行動範囲の幅を狭めてしまっていたのではないか、と類推してしまいます。朝日新聞の朝刊を読む中学生が、全国で何人いるのか知りません。どこかで、誰かに、またはどこでも誰でもいい、「高橋まつり」さんに、前へ生きるきっかけを与えられなかったことが残念です。若い時には、一見無駄で、無謀で、遠回りのような時間の過ごし方が、後年“したたかさ”とか“反発力”とか“耐える力”とか“生き続ける”ことの大事さを育んでくれる、と思うのは独断で偏見でしょうか。
それでも、頑張って東大で勉強し、電通に入社した高橋さんが、自らの人生を断つことで、もし仮に何かを伝えたり、訴えたかったことがあるとしたら、それは一体どんなことでしょう?
家人とも話し合い、さまざまに“想像”してみましたが、それを具体的な言葉として書くことは、ここでは慎まなくてはいけないでしょう。
高橋さんの同僚、上司、人事局、電通の産業医、あるいは入社の同期、新入社員研修のリーダー・サブリーダーなど関係者は、逃げることなく自死に至った現実を見つめることが求められます。そして、これからの各自の人生で、心と記憶の奥深く、忘れることのできない“高橋まつり”として存在し続けることでしょう。
電通では創立記念日の、毎年7月1日に1年間の物故者の慰霊碑が設けられ、多くの社員がお参りします。決して、三度目が起きないことを全社員が“共通の思い”として経営課題の最優先に取り組みことを期待しています。
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◆小倉で生まれて、小学校と大学は東京。
大阪で17年、東京で17年、広告会社の営業一筋。
07年夏から博多住まい、2011年6月退社し、家人の実家の医療法人の経営を手伝い、2015年4月から年金生活へ。。自宅は福岡市の西、唐津に近い糸島市福吉。海まで3分、山も近く、水も豊か。昭和7年建築の古民家を改装して、愛犬2匹とEnjyoy Country Lifeです。

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